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広告費が上がり続ける今、自社ECが赤字にならない広告費の上限(限界CPA)の決め方

江藤正親

江藤正親

アンリミテッドアム株式会社 CEO

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Meta の平均広告単価は、2026年の1〜3月と4〜6月のどちらも前年より12%上がりました(Meta の決算の数字。Digital Marketing Leap 2026-10-09 が Marketing Brew の記事から紹介)。日本のインターネット広告費も2025年に4兆459億円・前年比110.8%と過去最高になり、広告を出す会社が増え続けています(電通「2025年 日本の広告費」2026-03-05)。さらに日本郵便は2026年7月3日にゆうパック・ゆうパケットの基本運賃の改定を発表し、10月1日から新しい運賃になりました(日本郵便のお知らせ)。

結論から言うと、広告費の上限は「月商の何%」ではなく、「1件の注文で手元に残る粗利」から決めます。この金額を「限界CPA」と呼び、1件の注文の獲得に使える広告費の上限になります。広告単価も送料も上がる今は、この上限を自店の数字で一度出し直すだけで、赤字の広告を止める判断がその日からできるようになります。

広告費の上限は「1件の注文で残る粗利」で決まる

1件の注文で残る粗利が3,000円なら、その注文を取る広告費が3,000円を超えた時点で赤字です。上限はこの1本の線だけで決まります。

自社ECは、モールのように最初から買い物客が集まっている場所ではありません。Meta 広告・Google 広告・TikTok 広告で自分で集客する必要があり、広告を止めると集客もほぼ止まります。だからこそ「どこまで使ってよいか」を先に決めておかないと、売上は立っているのに手元のキャッシュが減っていく状態になります。

「広告費は月商の10〜20%」という目安もよく使われますし、ECヒーローズの講座でも最初の予算の目安としてこの幅を紹介しています。ただし、これはあくまで最初にいくら試すかの目安です。続けてよいかどうかは、1件ごとの上限と実際のCPA(1件の注文の獲得にかかった広告費)を比べて決めます。

今日出す数字は3つ。限界CPA・目標CPA・損益分岐ROAS

使う数字は、平均客単価と、1件ごとにかかる原価・送料・決済手数料・梱包資材の4つだけです。どれも Shopify や BASE の管理画面と、仕入れの請求書で分かります。

1. 限界CPA(1件の注文に使える広告費の上限)

限界CPA = 客単価 − 原価 − 送料 − 決済手数料 − 梱包資材

送料は「お客様からもらう送料」ではなく「店が運送会社に払う送料」で計算します。10月の運賃改定のあと、一度も計算し直していない店は、ここが一番ずれています。

2. 目標CPA(利益を残すための広告費)

目標CPA = 限界CPA − 1件で残したい利益

限界CPA ちょうどで売れても、利益は0円です。家賃・人件費・自分の給料を払うために、1件あたりいくら残したいかを先に決め、その分を引いた額で広告を運用します。

3. 損益分岐ROAS(広告の管理画面で見る数字)

損益分岐ROAS = 客単価 ÷ 限界CPA × 100(%)

ROAS(広告費用対効果)は「広告費1円あたり何円の売上が出たか」です。Meta 広告や Google 広告の管理画面に出る ROAS がこの数字を下回っていたら、その広告は赤字です。

計算の例(数字は説明のための例です)

項目金額
客単価(税抜)6,000円
原価1,800円
店が払う送料900円
決済手数料(例として3.6%)216円
梱包資材80円
限界CPA3,004円
1件で残したい利益1,000円
目標CPA2,004円
損益分岐ROAS約200%(6,000 ÷ 3,004)
目標ROAS約299%(6,000 ÷ 2,004)

この例では、送料が900円から1,000円に上がるだけで限界CPA は2,904円に下がり、損益分岐ROAS は約207%に上がります。広告の成績が同じでも、送料が上がった分だけ損益分岐点が上がるということです。決済手数料の率は、契約しているプランの画面で自分の率を確かめてから入れてください。

リピーターがいる店は、上限を「2回目までの粗利」で考えてよい

2回目の購入が実際に数字で出ている店だけ、新規顧客1人あたりの広告費の上限を上げられます。予想の数字で上げると、赤字が先に膨らみます。

たとえば、初回購入から90日以内に2回目を買う人が20%いて、2回目は広告費をかけずにメールで買ってもらえているとします。このとき、新規顧客1人から90日で見込める粗利は「初回の粗利 + 2回目の粗利 × 20%」です。上の例なら 3,004円 + 3,004円 × 0.2 = 約3,605円まで、新規顧客1人あたりの広告費の上限を上げられます。

大事なのは、20%という数字を自分の店の注文データで数えることです。Shopify なら注文の一覧を顧客ごとに並べ、初回から90日以内に2回目がある人の割合を数えます。数えられない間は、初回の粗利だけで上限を決めてください。リピートを増やす仕組みは、同じブログの「新規顧客の獲得コストが高い今こそ、自社ECのリピーターを増やす会員ランクとサブスク」で詳しく書いています。

上限が決まったら、媒体ごとに「上限を超えたら止める」基準を決める

Meta 広告・Google 広告・TikTok 広告のそれぞれで、直近7日のCPA が限界CPA を超えていないかを週に1回見ます。超えている広告は止め、目標CPA を下回っている広告に予算を寄せます。

ECヒーローズの講座(STEP14 自社ドメイン編)では、月の広告予算・媒体ごとのCPA・粗利率の3つを並べて、媒体ごとの配分を決める作業をします。そのときの前提が2つあります。

  • コンバージョン計測(購入完了の計測)を正しく設定する。Meta 広告はターゲティングの精度が高く、購入データが貯まるほど配信の最適化が進みます。購入完了の計測(Meta ピクセルと、サーバーから送る Conversions API)が抜けていると、CPA そのものが正しく出ません。
  • 最初は少額で、訴求の違うクリエイティブを複数並べる。どの訴求が反応するかが分かる前に予算を増やすと、上限を超える広告に一番予算が流れます。

広告の単価が上がる時期ほど、「上限を超えたら止める」というルールを先に決めておくことが、利益を守る一番確かな方法です。

今日15分でやる作業

手元に電卓かスプレッドシートを用意して、次の順に埋めてください。

  1. Shopify か BASE の管理画面で、直近30日の平均客単価(税抜)を出す
  2. 一番売れている商品の原価・店が払う送料(10月の新しい運賃)・決済手数料の率・梱包資材の額を書き出す
  3. 限界CPA = 客単価 − 原価 − 送料 − 決済手数料 − 梱包資材 を計算する
  4. 1件で残したい利益を決め、目標CPA と目標ROAS を出す
  5. Meta 広告・Google 広告の管理画面で、直近7日の CPA と ROAS を見て、限界CPA を超えている広告に印を付ける

5つ目で印が付いた広告が、今日止めるか予算を下げる候補です。

よくある質問

広告費は月商の何%までにすればいいですか?

最初に試す予算の目安として月商の10〜20%はよく使われますが、続けてよいかは1件ごとの限界CPA と実際のCPA を比べて決めます。粗利の少ない商品は10%でも赤字になり、粗利の多い商品は20%を超えても黒字のことがあります。

送料無料にしている場合、送料はどう計算しますか?

お客様から送料をもらっていなくても、店が運送会社に払う送料は1件ごとの費用です。限界CPA の計算からは必ず引いてください。

ROAS が高ければ安心ですか?

ROAS は売上の比率なので、原価や送料が上がると同じROAS でも利益が減ります。見るべきは、自分の店の損益分岐ROAS を上回っているかどうかです。

リピート率が分からないときはどうしますか?

分かるまでは初回の粗利だけで上限を決めます。Shopify や BASE の注文データから、初回購入から90日以内に2回目がある人の割合を数えてから上限を上げてください。

自分の店の数字で、広告の設計書まで作りたい方へ

この記事の計算は、ECヒーローズの講座「STEP14 広告を営業として設計する」で、自分の店の数字を入れて限界CPA・ROAS の設計書として仕上げる内容の入口です。まずは無料の基礎5講座で講座の進め方を確かめ、続けるなら月商100万円コース(自社ドメイン)(一括69,800円・税別)で STEP14 の自社ドメイン編まで進めてください。

この記事を書いた人: 江藤正親(アンリミテッドアム株式会社 CEO)。1998年から EC に携わる独立系 EC コンサルタントで、延べ1000社の EC を支援してきました。自らも、立ち上げから1年半で月商4500万円になった店を運営しています。ECヒーローズを運営するECモンスターの主催者です。

出典

この記事を書いた人

江藤正親

江藤正親

アンリミテッドアム株式会社 CEO

大学卒業後、送電線建設会社、コンサル会社、メーカーと転職の後に独立。
1998年よりECスタートし、独立系ECコンサルタントとしては日本最古。
1999年よりネットショップ運営に携わり、立ち上げ1年半で月商4500万円を達成。3年連続楽天総合3位。200社を立ち上げから年商1億円以上に導く。
最高年商10億円。商品開発からシステム開発、広告プロモーションとEC経営とシステム開発にまつわる業務に精通し、運営も行う。
サポート企業は延べ1000社を超え17名のEC関連本の著者を輩出。
自ら著書3冊を持ち、新聞、雑誌など各メディアに寄稿。
2013年設立した一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会は、最新の日本と海外最新事例をECコンサルタントにアップデートしている。
2017年には、早稲田大学主幹の一般社団法人日本イーコマース学会を設立、大学にECのカリキュラムを構築。
直近では、多くのシステム開発を要件定義から開発、納品まで、直接クライアントとやりとりし、請け負っている。

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